月と六ペンス

テレビドラマの「白い巨塔」をずっと見ている。主役の財前教授や里美助教授にも興味はあるが、今私が注目しているのは、財前の指導の下医療を行うことになった柳原医師。彼はここで正直に事実を告げるのか、それとも隠し通して権力を欲するのか。
医療に限らず、それぞれの世界で「権力争い」はある。私も、以前の職場で「権力争いに勝てない」とこぼす友人を見た。露骨に「権力争い」とは言わなかったが、話を聞いていると上司を味方につけられないという要旨だった。たぶん、先の友人は心からその上司を味方につけてこれからも贔屓にしてもらい、自分の案を通したかったのだろう。だが、これは欲張りだ。たしかに全部手に入れば嬉しいが、世の中そんなに甘くない。重要なのは「欲しいものがいろいろある中で何を手に入れるか」。上司を味方につけて今後も仲良くして欲しいのなら、上司に気に入るように案を変えればいいし、自分の案をわかって通してもらいたいなら、案をうまく説明して上司にうんと言わせる。こうして手法をあれこれ選ぶのが、権力をうまく手に入れる方法だと思う。
私はいわゆる「権力争い」という類のものは、つまらないと思っている。先に述べたような「手法をあれこれ選ぶ」ということは、私にはどう考えてもゲーム、あるいはそれ以下だとしか思えないのだ。しかも、権力争いに積極的にかかわりたがる人というのは、選ぶ手法がある程度決まっている。どうしてその程度のことに本気になれるのか、よくわからないのだ。それは、プレイステーションのゲームでどこにあるかわからないお宝のためにありとあらゆる行動を試してみるよりも、ずっと簡単で楽な道を歩んでいるような気がするのだ。