読了

この人の作品は、いきつくところが「脳」=「心」なのが解せない。「脳」が「心」であるという発想が、やはり理解できない。脳が心だとしたならば、脳や分泌される物質は皆同じなのだから、皆がおなじ心になってもいいはずじゃないか。結局は「考え」の決定的な違い=心なのではないか。脳ではないと思う。
とはいえ、面白い表現も随所に見られた。「『人間ならふつう、こういうことをされたらこう感じるはずだ』ということが『常識』であり、雑学が豊富なことではない」というのは、考えてみれば当たり前の話なのだが、世間にはあまり正確に理解されていない事実ではないだろうかと思われる。
また、個性化を叫ぶ教育に対して、「今教えるべきことは個性を主張することではなく、人の気持ちがわかる人間にならねばならないということ。」という。「常識教育」ともいったらいいだろうか、そういう教育が忘れられているというのは然りである。人の痛みがわからない、つまりは人の気持ちになって考えてみたことがないからこそ、卑劣ないじめが横行したり、残虐な犯罪が多数起こったりする、というのも一理ある。